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国本はる乃「楽満寺」


下総に過ぎたるものがいくつある。まず船橋に大神宮が、干潟に舞う千葉しがり、宗吾霊じん印旛うま、さては成田かさんりづか、飯岡、笹川、水滸伝。
九十九里には大利根が。波の花散る銚子港。
犬吠埼の灯台が名所数々あるなかには、香取郡はこみかどむら、ここなかざとにそびえたる。由緒ゆかしきその寺はずいえん観音。楽満寺。
 

国本はる乃


そろそろ浦賀にペリーの乗る黒船がやって来ようとする江戸の末。下総の国香取郡はなるいむらに、ためえもんという今年三十になる漁師がございました。
女房がおひさといって二十五。夫婦になって五年になりますけれども、まだこの夫婦に子供がない。
世の中は黒船騒ぎで大変ですけれども、遠く離れましたこの土地では至ってのんきなもので。

 

おい、おい、おひさ。何だっておめーはいつまで経っても子供を産まねーんだよ。

 

しょうがないだろ。出来ないものは仕方がないじゃないか。お前さん、いつもそればっかりだね。

 

そればっかりったっておめー。お名主様とこの猫見てみろ。時化に孕んでるじゃねーか。

 

猫と人間と一緒になるかい。第一、お前さんの種が悪いんだろ?

 

何言ってやがんだい。てめーの畑が悪いんじゃねーか。

 

種だよ。

 

畑だよ。

 

種。

 

畑。

 

って、まるでお百姓の喧嘩のよう。

所へ止めに入ったのがこみかどむらから越してきた手習い士官のそうのじょう。

 

まあまあ…お二人な、お二人な。喧嘩などしたらいかんよ。話は残らず伺ったが、ためえもんさん。子供なんというものはな、授かりものと言うくらいじゃな。そんな焦ったって駄目だよ。

 

そうのじょうさん、お前さんはね、いい子供がいるからそうやってのんきにしていられるわ。

 

いや、それがね。あたしも長年なかったのが、ふとしたことから出来たんだ。ためえもんさん、おひさ様、よい話を聞かせてあげましょう。
 

国本はる乃

 

手習い士官の仲裁で、夫婦げんかがどこへやら。たちまちニコニコ恵比須顔。りょうも休んでふたがりは、仲良く家を出ましたら、その行く先はどこじゃやら。以来、夫婦は睦まじく家業へ精出す。そのうちに軒端の梅は早散って、空にゃひばりがたかねかと、桃が咲いたよ。がくとが狂四郎酒のひな祭り。女房のおひさもほんのりと日焼けた頬を赤く染め、夫に向かいて話す夜が。

 

ちょいと、ちょいとお前様。聞いておくれなね。見るものを見ないんだよ。

 

何を?見るものを見ない?だからおめー言ったじゃねーか。紙芝居が来た時はちゃんと見とかなきゃ、あとで後悔するって。

 

紙芝居の話じゃないよ。そうじゃなくてさ。わからないのかい?ほら、すっぱいもんが食べたいんだよ。

 

何を?何だおめー。変なこと言ってんな。ほんだったら、台所入って梅干しでも何でも好きに食らいねーな。

 

そうじゃないよ。そうじゃなくてさ、ほら。出来たんだよ。

 

ほー、おできが?

 

分からない人だね、そうじゃないよ。子供が宿ったんだよ。

 

え?おひさ、そりゃ本当か?

つづきは、動画で。


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