月額980円(税抜)で、
この動画は見放題になります。

宝井琴柑「ボクサー白井義男伝 生い立ち編」


さて、お話は大正の十二年。九月の一日、正午近く。ぐらぐら…。関東一円が大揺れに揺れました。

ご存知、関東大震災でございます。この時、錦糸町に住まいしておりました大工の家族。

お父さんの白井とくいち、妻をきくえと申します。

三人の子供の手を引きまして、命からがら隅田川を渡りまして、浅草観音様の裏手、三河島村…現在は荒川区三河島となった所でございますが、そこまで落ち延びたわけでございます。
 

何とかここに住まいを見つけまして、実はこの時、四人目の子供がきくえのお腹の中には宿っておりました。

十一月の二十三日、予定よりもひと月早く、この世におぎゃーと誕生いたしました玉のような男の子。

 

宝井琴柑

 

あなた、男の子ですよ。

 

おー、そうか。きくえ、でかしたな。よくこの大変な時に、立派に産んでくれたもんだ。

 

はい。何とか、あの地震の時にこの子を世に出してあげたいと、その一心で、ここまで逃げてまいりました。

 

あー、そうだな。それにしても、この度の地震では、ずいぶんとこの村の方たちにも世話になったもんだ。

こんな大変な時に生まれたんだから、きっとこの子も運の強い子に違いない。そうだな。義理人情に厚い、そんな立派な人間になってもらいたい。義理の義を取って義男と名付けようじゃないか。

 

こうして、義男と名付けられましたる男の子。這えば立て、立てば歩めの親心。すくすくと成長してまいります。

やがて、はけた小学校の六年生となったわけでございますが。

まあ幾分か体が小さかった義男少年。クラスの中でも一番体の大きな堀口君というのに、いつもいじめられておりました。

 

おい、白井。こっちへ来いよ。お前、鍛えてやるぞ。パカパカパカ。

 

痛いよ、やめてよ。

 

殴られちゃー堪りませんので。

 

あのさ、堀口君。母ちゃんが新しい鉛筆買ってくれたんだ。これ、あげるよ。

 

おー、そうか。じゃあ今日は勘弁してやろう。

 

あのさ、堀口君。今日は消しゴム、新しいの持って来たんだ。これ、あげるよ。

 

おー、そうか。じゃあ今日は勘弁してやろう。

 

まあ、しかしそうも小遣いが続きません。とうとう担任の先生に訴え出ました。

 

先生。いつもいつも、いじめられて困ってるんです。

 

おー、そうか。白井、そりゃ悔しいな。だがな、お前だって男なんだ。たまにはやり返してみろ。

 

こうけしかけられました、義男少年。

校門の前で待ち構えております堀口君の前へ。

 

おー、どうした白井。

 

今日という今日はやり返してやるんだ。

 

つづきは動画で。


宝井琴柑動画一覧はこちらから
 

このページを共有する